昔々、或るところに。

昔々、或るところに。

村の生娘に片っ端からプロポーズをして、挙句に村人全員から呆れられ飽きられた困り者のハリス爺さん、通称"チャラ爺"が独身を拗らせ一人寂しく執拗く生き長らえていました。

そもそも、こんなチャラ爺の一日と言えば、朝は山へ行き花見酒。昼は川で冷やしておいた日本酒を呑みながら釣りに興じ、夜は一人静かに晩酌をする毎日。たまぁに家事と極稀ぇに仕事(という名の出会い探し)をする、何とも自由で間抜けなものでしたので、頼れるはずも好かれるはずも無く、不動のボッチライフ歴98年という痛々しい人生が、不名誉にも確立されていました。

ある日の事、チャラ爺が気紛れに川へ洗濯に向かうと、川上の方からドンブラコォ〜ドンブラコォ〜と大きな桃が流れてきました。

チャラ爺は「なんて大きな桃なんじゃ…」と思いながらこれをスルーして洗濯を続けていると、なんと流れて行ったはずの桃が、川下から激しく身を震わせながら逆流してくるではありませんか!

あまりに摩訶不思議な現象に陥ったチャラ爺はとても恐ろしくなり、近くにあった岩を桃に投げつけ、続け様にドロップキックを食らわせました。

ジタバタと死に物狂いで流れに逆らっていた桃は、あまりの衝撃に気を失ったのか流れに身を任せるように川下へと姿を消していきました。

明くる日の事、昼と言えば呑みながら釣りをするのが日課のチャラ爺は、変わらず川へ竿を携え向かいました。
川へ着き、日本酒を煽り釣りに勤しむと…

「ドンブラコォ〜ドンブラコォ〜!!!」

と、西川貴教(T.M.Revolution)に負けず劣らぬ声量で、フル回転して流れてくる大きな桃の姿が見えました。

チャラ爺はすぐに糸を引くと、流れて行く桃をまたしても見送りました。
そして、やはりと言うかまたしても桃は逆流を始めてチャラ爺に向かって来るではありませんか。

昨日の一件で耐性のついたチャラ爺は、桃に向かって岩を投げつけるも、桃は見事にこれを回避。チャラ爺は、不意を突かれて桃の体当たりを食らってしまいました。

川から岸へ、不本意ながら上がって来やがった桃を睨みつけていると、真ん中からパッカーンと桃は割れて、中から恐しい顔の男の子が出てきました。

再び摩訶不思議な現象に唖然としたチャラ爺に対して男の子は一言、怒鳴り付けました。

「いや、拾えよ!!!」

めでたしめでたし(?)

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