Yさんの家庭は、話を聞けば聞くほど嬉しそうに語る

 Yさんの家庭は、話を聞けば聞くほど嬉しそうに語る彼の雰囲気から察するに、とても幸せな家庭で、仮に彼が知名度が高くないアーティストであったとしても、ボクは彼を心から尊敬している。それは、「ビックなアーティストになりたいならしたたかな自分をもつことだ」という提言をする、彼自身そうなれなかった自分を悔やみながら他の未来を祈っている彼の優しさが、この世の中で最も美しいと信じる“感性”だから。
 ボクは19のときに一度人生を不可抗力よって壊されてしまってから、新たな人生を模索する20代、数え切れないほどの出会いや別れをやみくもに繰り返してきた。そのなかで心理立場的に弱かった自らを責めつづけ、自らのために涙を流したことは数え切れないほどあったが、別にお互いが死ぬわけでもなく人との別れで涙したのは、はじめてだ。当時アーティストを目指していた自分があり、現実にアーティストであるYさんの姿に、自分の未来を投影させたからなのか。アーティストという人生を歩みながらも、その仕事としての成果よりも、夢よりも、まずひとりの人間として“大切なもの”という命題を貫き続けた彼を、ボクは決して忘れることはないだろう。そしてまた会える、そんな気がする。

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