【ラジオ配信告知】パニガーレ乗りの織姫

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【ラジオ配信告知】パニガーレ乗りの織姫

 彼女は、三十歳まで生きるつもりは無いと、沖縄居酒屋でオリオンビールを流し込み、ラフテーを頬張りながら演説した。
 よくある若者演説だ。「人生三十年」…僕も人生1周目だから理解するには難しいが、それも内容次第では悪くないのかもしれない。
 恐らく、酷く解像度の高い彼女の死生観を聞いたのは僕やパートナーだけではないだろう。それくらい彼女は刹那主義であったし、突拍子もないことを思い付いては直ぐに行動する。
 昔、パニガーレv4というバイクを誕生日にプレゼントした。サーキットで走り、盛大に転倒し、ライダースーツや安全具で殆ど無傷のまま、半損のパニガーレを抱え鼻血を出し、笑顔でコースから戻ってきた光景を忘れた者はいないだろう。

 そんな彼女は、6月の暑い日、高所から飛び降りた。落下までに様々な箇所に接触し、身体の大半の骨を砕き、それでも一命を取り留めた。
 しかしながら気の早い彼女の精神は、先に天国へ行ってしまった。残った身体は生命維持の機械に繋がれ、ただ心臓が動くだけの抜け殻となった。
 そして時間差で郵送された両親宛の遺書を受け取ると両親は決断した。両親とパートナー、神父様の見守る中、抜け殻は完全な死を受け入れた。
 僕は一度視たら忘れられないから、最期に病院にも葬儀にも行けなかった。奇麗なままの彼女だけでよかった。

 2022年7月7日、27歳の人生が終った。

 僕は僕に託された遺言と約束によって、いつか乗せてやると言った自分の船から託された遺骨の一部を海洋散骨にした。
 その日は雨で、見送りに表で演奏していたバイオリンは傷み、全力で弾いたら弓もダメにした。ユーフォやフルートも持っていった、コンサート1公演分ほど弾きっぱなしだった。
 同行した彼女のパートナーは、結婚式で着ていたドレスを着ていた。そのまま海に飛び込んでしまうのではないかと他の人達に見守っていてもらった。両親は来なかった。




 もう少しだけ、10年近い交友のあった彼女との思い出を話そうと思う。ただ声に出して整理したいだけだが、もし聞きたい人が居れば…と思って告知に。その日の配信は、ただ昔話をするだけだ。なるべく楽しい話を。

◆2022年 8月 6日 19時〜(予定)
亡くなってから30日の追悼ミサの日に

※アーカイブは非公開です

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